「−……」
シンプルな白の携帯電話。
それと一緒に視界に入ったものに、私は硬直した。
金色のハイビスカスに、赤い深海珊瑚のストラップ。
藤原…先輩…。
軽くドキドキしていた心音は、ドクンドクンと重いものに変わり、血の気がサァーっと、引いていく。
翔と付き合う…って、
私、何てことしてんの−…?
忘れていた…なんて、許されない。
私は藤原先輩の…彼女。
「どうしよう…」
声が震える。
どうすればいいか…なんて、本当は考えなくても、分かってる。
今すぐ体育館に入って、翔に「さっきの話はなし」と、切り出せばいいだけ。
翔は私のことが好きで、付き合うと言い出したわけじゃない。
“面白そう”そう言われた通り、ただの好奇心。
だから大丈夫。
今ならまだ、間に合う。
そう思うのに、私の足は固まったまま動かない。
何でよ…。
迷う必要なんか、ないじゃん。
激しい自己嫌悪に襲われながらも、私は携帯を握り締めるばかりで。
その手は震え、先輩のくれたストラップが、ユラユラと揺れていた。



