13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


「−……」

シンプルな白の携帯電話。
それと一緒に視界に入ったものに、私は硬直した。

金色のハイビスカスに、赤い深海珊瑚のストラップ。

藤原…先輩…。


軽くドキドキしていた心音は、ドクンドクンと重いものに変わり、血の気がサァーっと、引いていく。

翔と付き合う…って、
私、何てことしてんの−…?

忘れていた…なんて、許されない。

私は藤原先輩の…彼女。


「どうしよう…」

声が震える。

どうすればいいか…なんて、本当は考えなくても、分かってる。

今すぐ体育館に入って、翔に「さっきの話はなし」と、切り出せばいいだけ。

翔は私のことが好きで、付き合うと言い出したわけじゃない。
“面白そう”そう言われた通り、ただの好奇心。

だから大丈夫。
今ならまだ、間に合う。


そう思うのに、私の足は固まったまま動かない。

何でよ…。
迷う必要なんか、ないじゃん。

激しい自己嫌悪に襲われながらも、私は携帯を握り締めるばかりで。

その手は震え、先輩のくれたストラップが、ユラユラと揺れていた。