何か言わなくちゃ…何か…。
慌てて“何か”を考えるけど、私の口から出たのは、
「…面白いって何よ!」
聞きたいことではなく、どうでも良いことだった。
それに対して、翔は“べー”と、舌を出して見せた後、
「檜山、ありがと」
一方的に笑顔を覗かせ、体育館の中へ戻って行った。
「何なのよ…」
本当、意味が分からない。
“ありがとう”と、お礼を言われることなんてしてないし…
……本当に付き合うの?
急に不安に駆られるのは、実感が何ひとつとして湧いて来ないことと…何度も、こんな経験があったから。
毎回、これからの展開に胸を踊らして…でも数分後、すぐに突き落とされる。
それは…夢だから。
夢−…そう、きっとこれも夢に決まってる。
そう思った私は、頬を指で掴んでつねってみた。
……痛い。
確かに感じる小さな痛み。
「まさか」と、力を込めれば、痛みは比例して大きくなる。
「うそ…」
どうしても信じられなくて、私は声を漏らした。
「檜山」
「えっ?あっ!?」
名前を呼ばれて、声の方を見ると、体育館に戻ったはずの翔が、扉からまた顔を出していた。



