翔がノリで…冗談で、「付き合う?」と、聞いたことは分かってる。
それに対して、私が返すべき返事も分かってる。
なのに、私は翔の方へ身を乗り出して、全く逆のことを口走っていた。
「ひ…やま…?」
翔が目を真ん丸にしてる。
当たり前だ…どうしよう。
焦りと恥ずかしさ…どっちとも取れる胸の鼓動が苦しくて、姿勢はそのまま…目だけを翔から逸らす。
「……マジで…言ってんの?」
そんな私に、引き返すタイミングを、翔がくれた。
「そんなわけないじゃん!冗談に決まってるでしょ!」って、言えばいい。
翔だって、それを待ってる。
だけど…言葉は喉で詰まって、声にならない。
凍えるほど寒いはずなのに、私の身体は熱くて…体の前についた手の平には、じんわりと汗をかいてる。
何度も夢で聞いた、翔からの告白。
夢のそれとは、似て異なるものだけど、夢見ていた言葉に、欲望がそのまま返事になった。
ここで私が「冗談」と、訂正すれば夢は終わる…。
夢−…
もしかしたら、これは夢なのかもしれない…。
だって、翔が私と付き合うなんて、有り得ない。



