その瞬間、「ダメだ」と思った。
しばらく恋なんてしなくていい。
ましてや、適当な彼女なんていらない。
きっと…俺はずっと、苺先輩を忘れられない。
心の奥底には、失恋によって、暗く沈んだ気持ちが確かにあった。
でも、
「適当とか失礼だな!まぁ…可愛い子に告られたら付き合うかも」
笑いながら冗談を、さらりと言えてしまっている自分。
「津田先輩みたいな雰囲気の子が、翔に告りたいって来てたよ」
たった今フラれたのを知ってるくせに、檜山も気を遣う素振りなんか見せず、ごく普通に話す。
「あぁー…そういうタイプは、しばらくいいかな」
「何で?」
「苺先輩の変わり…っつーか、重ねて見る気がして、嫌だ」
嘘と本音が混ざり合った会話。
だけど、無理してなんかしていない。
自分でも不思議なくらい、自然な流れで会話が出来ていた。
「へぇー、女泣かせの翔にしては、ちゃんと考えてるんだ」
檜山は頬杖をついて笑う。
「だから女泣かせとか、適当とか、さっきからタラシみたいに言うなって!」
「だってタラシじゃん」
思い返せば、いつもこうだった気がする。



