さっきは寒いとしか思わなかった空気が、今は火照った顔を冷やしてくれるようで、心地好い。
「てかさ…檜山こそ部活行けよ」
体育館の扉に続く3段の階段。
それを先に降りる檜山に言うと、
「私、今日歯医者なの」
いつもの仏頂面で振り返る。
「じゃあ何で来たんだよ」
「先輩に言うの忘れてて…言いに来たの」
言いながら檜山は、一番下の階段の隅に座った。
つられるように俺も隣に座る。
「「……」」
流れる沈黙。
フラれたのを知られてる俺の立場からしたら、すごく気まずい。
そもそも何で一緒に居んだ…?
部活に戻れない俺を助けてくれたのかもしれないけど、俺に何も用のない檜山が、無理して一緒に居ることはない。
「何か…言いたいことでもあんの?」
早く帰るように促せばいいのに、何故かそれをしなかった。
檜山は何か考えるように、暗くなり始めた空を見上げた後、
「ね…何でそんなに私のこと、目の敵にすんの?」
予想外のことを口にした。
「は…?」
苺先輩とのことを絶対聞いて来るだろうと思っていた俺は、ポカンと口を開ける。



