「泣くか笑うか、どっちかにしたら?」
すぐ近くで聞こえた女子の声。
瞬時に顔を上げるけど、目の前には誰も居ない。
「ここよ」
「うわっ!」
思わず声を出して驚いた。
俺の隣…体育館の扉から顔だけを出す形で、いつの間にか檜山が立っていたから。
「いつから居たんだよっ!?」
「ちょっと前」
全く気付かなかった…。
「盗み見とか、趣味わりぃ」
情けない姿を見られたことが恥ずかしくて、檜山から顔を背ける。
「こんなに堂々としてんのに、どこが盗み見なのよ」
そう言われてみれば…確かに。
俺は黙ったまま、早く何処かに行ってくれるのを必死に願った。
でも、
「ちょっと出て来て」
「は?何で」
「いいから早く」
「ちょっ…」
檜山が俺のジャージの裾を掴んで、外へ引きずり出そうとするから、咄嗟に振り向いてしまった。
「そんなんじゃ部活戻れないでしょ」
「っ…」
優しくしてくれてるのか、馬鹿にされてるのか、分からない。
とりあえず、余計なお節介。
そう思いながらも、檜山に従って、もう一度体育館から出る俺が居た。



