「じゃあ俺、そろそろ戻らないと…」
まだ苺先輩と話していたい。
だけど、これ以上話しているのを誰かに見られたら、また変な噂が流れてしまうかもしれない。
それだけは嫌で、体育館の扉に手を伸ばす。
「ごめんねっ。あ、バレー部入ったの?」
引き止めるように掛けられた言葉。
そういえば…苺先輩に言ってなかったんだっけ…。
「うん。正式な入部は、2年に上がってからするつもりだけど」
学校でのこと、全て話すほど一緒に居たのに、いつの間にか部活を始めたことすら、教えられていない距離が出来ていたことを、思い知る。
苺先輩はもう西藤先輩の彼女なわけで、男の俺はそう親しくは出来ない。
このまま、距離が広がっていくばかりなんだろうな…。
しんみりして俯いた…その瞬間、
「翔くんがバレーしてるの、カッコイイよ!」
思いがけない言葉のプレゼントを、苺先輩がくれた。
“カワイイ”じゃなく“カッコイイ”…。
その言葉は慣れなくて、くすぐったい。
でも、すごく嬉しかった。
今までで聞いたどんな言葉よりも、嬉しかった…。



