13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


「じゃあ俺、そろそろ戻らないと…」

まだ苺先輩と話していたい。

だけど、これ以上話しているのを誰かに見られたら、また変な噂が流れてしまうかもしれない。

それだけは嫌で、体育館の扉に手を伸ばす。

「ごめんねっ。あ、バレー部入ったの?」

引き止めるように掛けられた言葉。

そういえば…苺先輩に言ってなかったんだっけ…。

「うん。正式な入部は、2年に上がってからするつもりだけど」

学校でのこと、全て話すほど一緒に居たのに、いつの間にか部活を始めたことすら、教えられていない距離が出来ていたことを、思い知る。

苺先輩はもう西藤先輩の彼女なわけで、男の俺はそう親しくは出来ない。

このまま、距離が広がっていくばかりなんだろうな…。

しんみりして俯いた…その瞬間、


「翔くんがバレーしてるの、カッコイイよ!」


思いがけない言葉のプレゼントを、苺先輩がくれた。

“カワイイ”じゃなく“カッコイイ”…。
その言葉は慣れなくて、くすぐったい。

でも、すごく嬉しかった。
今までで聞いたどんな言葉よりも、嬉しかった…。