しまった…と後悔しながらも、謝る勇気もなくて、私はすぐに背を向けた。
「あっ、ありがとうございます!」
背後から聞こえた、津田先輩の声。
感じが悪く、可愛くない私とは、正反対な津田先輩の行動に、胸が苦しくなる。
だから、苦手なんだ。
私にないもの、欲しいもの…全部持ってるから。
「佳奈ちゃん、何話してたの?」
津田先輩が帰ると、さっきのクラスメートにさやかちゃん、それから他のクラスメート達が、私を囲む。
「何って…ただ、翔の居場所教えただけだよ?」
煩わしい…。
今朝の翔になった気分。
「ごめん、私これから歯医者なんだ」
本当はまだ時間がある。だけど、みんなの相手をするのは、まっぴら御免。
人だかりから抜け出そうと、さやかちゃんの隣を通り過ぎようとした時、
「教えちゃったんだ…」
小さく呟いた声を、私は聞き逃さなかった。
以前の私なら、さやかちゃんと同じ気持ちを抱いて、教えなかったと思う。
「ごめんね」
私はすれ違い様に、それこそ小さな声で謝った。



