だから、今日歯医者…!
頭の中で思いながらも、口にしなかったのは、予約している時間まで、まだ余裕があったから。
まぁいいか…と、時間潰しに少しだけ、雑談に付き合おうと思った。
連れて来られたのは、教室の隅。
そこには見知らぬ女子が、ひとり気まずそうに立っていた。
「岡田くん、もう部活行ったって!」
私の手を引いていた子が言うと、
「そう…」
何だか少し、がっかりした様子の女の子。
あ……。
この雰囲気…知ってる。
不意に感じた、嫌な予感。
「私、歯医…」
咄嗟に逃げようとしたけど、
「この子、1組のさやか。さやかね、岡田くんに告りたいんだって」
先を越されてしまった。
さやかちゃん…目の前の女の子は、恥ずかしそうに俯く。
やっぱり…。
中学の時、幾度となく経験した、このシチュエーション。
すっかり忘れていたけど…翔は意外とモテる。
高校に入ってから穏やかだったのは、みんな津田先輩と付き合っていると思っていたから。
しかも、翔の方が先輩に夢中…って感じだったから、告白しても無駄なことは分かりきっていた。



