13センチの片想い。私とアイツの恋の距離



今日は入学式のみで授業がなく、俺達1年は昼で学校が終わる。

だけど、俺はまだ帰る気はなかった。

荷物をまとめて、教室を出ようとした時、

「翔っ!」

振り向くと、そこに居たのは檜山。
相変わらず背が高く、悔しいが見上げる。

「今日朝、メールしたんだからね!」
「あぁ…ごめん」

メールなんて、全く気付かなかった。

「もーっ!朝から何してんの!?」

檜山は強気な口調。
いつもなら、何か言い返す所だけど、

「悪い!俺、急ぐからっ!」
「ちょっ…」

檜山を振り切って、俺は教室を出た。


向かう先は…2年5組。

あの先輩に、もう一度会いたくてたまらなかった。

こんな気持ちは初めてで、

とにかく、嬉しい様な恥ずかしい様な、くすぐったい“恋”という気持ちが、背中を押していた。


5組のドアは開いていて、
外から中の様子が伺える。

まだ弁当を食べている人も居れば、友達と話している人、耳にイヤホンをして音楽を聴いている人、ボールを持って外に出る人も居た。

そんな教室の雰囲気が、中学を出たばかりの俺には大人に感じられて、新鮮だった。