それに対して、私は頭を横に振る。
きっと、先輩に言われた方が困った。翔のことを気にしないふり、出来なかったと思うから。
だから、むしろこれで良かった。
「佳奈ちゃん…」
隣に立っていた先輩が、私に一歩近づく。
「ずるいこと言っていい?」
急に真面目な顔になった先輩。
ドクン…と、緊張する。
「何ですか…?」
やっと口を開くと、先輩は私の手を取って、
「どこにも行かないで」
真っ直ぐ、私を見てそう言った…。
本当に、夏祭り以前に関わったことなんてないし、先輩にはちゃんとした彼女だって居たはず。
いつ、どのタイミングで私を好きになったのか、さっぱり分からない。
でも今、先輩は私のことを本気で想ってくれてる…それが、痛いほど伝わって来た。
「……」
だんだんと縮まる、私と先輩の距離。
ずるい…。
そんな切なそうな顔をされたら、逃げられないじゃん…。
ううん、逃げちゃいけない。
私は先輩の彼女なんだから…。
同意するように目を閉じると、私たちの顔は静かに重なった…。
初めての感触は、冷たかった。
それは…想像していたよりも、切なくて、苦しかった-…。



