「え…」
言葉の意味が分からなくて、私はストラップから、先輩へと目線を移す。
「佳奈ちゃんって、あんま笑ってくれないから」
「そう…ですか?」
「うん」
「……」
いつもヘラヘラ笑ってるタイプじゃないのは自覚してる。
だけど、「笑わない」とはっきり言われたのは、少しショックかもしれない。
何となく言葉を失う私に、
「いつも切なそうな、悲しそうな顔してるから」
そう藤原先輩は付け足した。
切なそうな、悲しそうな顔…。
指摘されて初めて、そうかもしれない…と、思った。
朝学校に行けば、教室に翔が居て、放課後も翔と同じ空気の中に居て、
忘れられる時間なんて殆どない。
「…ごめんなさい」
さっきのこと、今のこと…全てに対して謝ると、先輩はまた口を開いた。
「岡田くんが居て、びっくりした?」
きっと先輩が尋ねているのは、“バレー部に翔が居て”だということ。
「……」
質問の意味は分かるのに、私の口が開かないのは、喋る度に先輩を傷付ける気がするから。
「黙っててごめんね」
先輩は小さな声で言った。



