13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


2セット目の試合。

コートの外側に立って、バレーボールを数回、床に弾ませる。

相手チームを見て、どこにサーブを打つか定めた私は、ボールを両手で持ち、自分の体より少し前に柔らかく投げて、助走を付けて踏み込んだ。

部活に、試合に夢中になっていて、この時ばかりは…本当に忘れていた。

なのに、


「翔!」

え-…。

いきなり耳に入って来た、呼ばれるはずのない名前。

集中力が途切れて、振り上げた手に入れていた力が、咄嗟に抜ける。

「…あっ!」

声を上げた時には遅かった。
私の打ったボールは弱々しく宙に舞って、ネットを越えることすら出来ず、自分チームのコートに落ちた。

「ごめん!」
「佳奈、どうしたの?」

明らかにおかしいサーブ。

「ちょっと手が滑っちゃった。ごめんね」
「いいよ!ドンマイ」

「次、頑張ろ」と、肩や背中を軽く叩いてくれる友達たちに、私は笑顔で返す。

だけど、本当は違う…。
手が滑ったわけじゃない。

ドキン、ドキンと強く打つ鼓動。
居るわけない、きっと聞き間違い。

自分の鼓動を治めるように言い聞かせ、声が聞こえた男子コートを恐る恐る見た。

「-…」

何で……居るの…?