13センチの片想い。私とアイツの恋の距離



ほんの少し物寂しい気持ちで歩いていると、

「岡田くん?」

前方から誰かに名前を呼ばれて、足を止める。

見上げるように顔を上げた先に居たのは、男子バレー部の部長、藤原先輩。

「あっ!おはようございますっ!」

少し慌てて挨拶すると、「おはよ」と、先輩は爽やかな笑顔で返してくれた。そして、

「前言った通り、放課後遠慮せず来たら良いから」

言葉の意味は、2年生が修学旅行で居ない間、バレー部に来ても良いということ。
1年生だけの時の方が、試合も出来るし、練習にも混ざりやすいだろう…と、この前見学しに行った時に言ってくれたのだった。

「ありがとうございますっ!」

そんな藤原先輩の心遣いが嬉しくて、ついつい声が大きくなる。

「うん、じゃあ」

予鈴のチャイムが鳴り、笑顔のまま片手を軽く上げる先輩に、

「気をつけて修学旅行、行って来て下さい!」

気持ち深く頭を下げて、俺は自分の教室へと急いだ。



気付かなかったんだ。

藤原先輩が俺の後ろ姿を、ずっと見ていた事に-…。