ほんの少し物寂しい気持ちで歩いていると、
「岡田くん?」
前方から誰かに名前を呼ばれて、足を止める。
見上げるように顔を上げた先に居たのは、男子バレー部の部長、藤原先輩。
「あっ!おはようございますっ!」
少し慌てて挨拶すると、「おはよ」と、先輩は爽やかな笑顔で返してくれた。そして、
「前言った通り、放課後遠慮せず来たら良いから」
言葉の意味は、2年生が修学旅行で居ない間、バレー部に来ても良いということ。
1年生だけの時の方が、試合も出来るし、練習にも混ざりやすいだろう…と、この前見学しに行った時に言ってくれたのだった。
「ありがとうございますっ!」
そんな藤原先輩の心遣いが嬉しくて、ついつい声が大きくなる。
「うん、じゃあ」
予鈴のチャイムが鳴り、笑顔のまま片手を軽く上げる先輩に、
「気をつけて修学旅行、行って来て下さい!」
気持ち深く頭を下げて、俺は自分の教室へと急いだ。
気付かなかったんだ。
藤原先輩が俺の後ろ姿を、ずっと見ていた事に-…。



