13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


「何ですか?」

先輩より前に出てしまった私は、振り返って聞く。

「俺が居ない間にさ…」

月に掛かっていた雲が、通り過ぎて行っているのだろうか。だんだんと照らされていく先輩の顔。

何か考えるかのように、言葉に詰まった先輩は…

目を細めて、悲しそうな顔をしていた。

だけど、

「いや!やっぱ何でもない!」

月の光が全体に当たると同じタイミングで、先輩の表情は笑顔に変わった。

「…え。何なんですか?」

あんな顔を見せられたら、気にしないでいられるわけなくて、私は再び問い掛けるけど、

「何でもないよ。早く帰ろ、親が心配するよ」

私の頭をポンポンッと軽く叩くように撫でて、歩き出した。

「気になるじゃないですか、教えて下さい!」

小走りで追い掛けて、先輩の隣に並ぶ。

「んー、浮気しちゃダメってことかな」

冗談のように先輩が笑うから、私は“違う”、そう思って「えー」と不満そうに声を上げた。

そんな私を見下ろして、先輩は笑うだけで。


でも後々考えれば、これが本心だったんだと思う。


藤原先輩が修学旅行中に起こること、知らないのは私だけ-…。