「は…?」
“待って”なんか言われたら、無視して走って行くわけにもいかず、俺は足を止めるしかない。
振り返ると、背の小さな女の子。
自分も小さいのだけど、バレー部に所属していて、周りの女子の背が少し高めばかりったせいか、すごく小さく感じた。
「えと…あの…あー…」
女の子は俯いたまま、何か困っている様子。
何が言いたいんだ…?
告白?…ってこんな子知らないし。
だいたい今告白する奴なんていないだろ…
入学式に遅刻するっていうのに…
…遅刻?…遅刻!
「分かった!」
まるでクイズ番組の様につい声を上げてしまった。
だけど、その勢いのまま言葉を続ける。
「アンタどこ行けばいいか分からないんだろっ?」
このままだと遅刻すると思った俺は、返事も聞かずに、彼女の手を取って走り出した。
黙って引っ張られるまま、一生懸命走る姿に、
やっぱり、どこへ行けばいいか分からなくなってたんだ。
間違いないと確信する。



