相手は先輩だから、下手な否定は出来ず、私は無言で頭を横に振りながら、引かれるままにその場を離れた。
しっかりと掴まれた手…。
これじゃまるで…
付き合ってるみたいじゃん!
そう思った時、頭の中でひとつの事を思い出して声を上げる。
「あのっ…手、手!」
「えっ?」
ピタッと足を止め、振り向いた先輩。だけど、手は今だ掴まれたまま。
「離さないと!彼女に勘違いされちゃいますよ!」
思い出したのは…先輩には“彼女”が居るってこと。
同じ学校かなんて知らないけど、もし他校の生徒であっても、文化祭なんて来ている可能性は大なはず。それに、本人に見られなくても、周りはもう勘違いしている。
私のせいで彼女との仲に何かあったら嫌だし、私自身も面倒に巻き込まれるのはごめんだ。
掴まれた手を見つめ、そんな事を考える私に、先輩はさらりと言った。
「大丈夫だよ。別れたから」
え…別れた?
パッと顔を上げて、思いがけない返事に唖然とすると、先輩はニコッと笑って、また私の手を引いて歩き出した。



