「もしかして…」
何かを言おうとした藤原先輩の一言に、ビクッとする。
先輩は私に好きな人が居る事を知ってて…今ので翔だと気付かれてしまったかもしれない。
二人に繋がりはないのだから、別にバレても構わないけど、やっぱり恥ずかしい。
何か話題を逸らさなきゃ…。
そう思ったけど、
「檜山さん、店番いつまで?」
先輩が口にしたのは、さっきの「もしかして」を、完全に打ち消した質問。
「もう少しで終わりますけど…」
少し戸惑いながらも、逃げ道が出来たようで、私は素直に質問に答える。
「何か予定ある?ちょっと…時間ないかな?」
え……。
思いがけない先輩からのお誘いに、私は周りの目を確認すると、みんな客の対応に追われていて、こっちを気にしていない。
「中学の時の友達が来て、一緒に回ることになってるんですけど…それまでなら…」
それでも念のため、声を潜めて返事する。
「ありがとう!じゃあ後で!」
約束を取り付けると、藤原先輩は早々と隣の焼きそば屋に戻って行った。
その後ろ姿を見ながら、あっさりと藤原先輩の誘いに乗った自分に驚いていた…。



