「言われなくても!」
ほんの少し間を置いて、翔はそう言うと私から離れて行った。
「…」
何だろう…自分の気持ちが“寂しい”。
翔が他の女の子と付き合っているのは嫌。
だけど、あの日津田先輩に借りた傘は、翔に返してと預けた。
翌日の天気は晴れで、言われた通り傘置き場に返しても、取られる事はなかったと思う。
だけど、人に借りた物。万が一の事を考えると、とてもそれは出来なくて。
自分で返しに行く事も出来たのに、翔を使ったのは…心の中で認め始めた証拠。
津田先輩は可愛くて女の子らしい、翔とお似合いな女の子。
それに…優しい人だから。
「佳奈ちゃん、お客さん」
「あっ、ごめん!」
商品を並べ終えたにも関わらず、ぼーっとしていた私は、友達に注意されて、その場を退けた。
もう、何やってるんだろ…。
「大丈夫?」
誰かに声を掛けられて隣を見れば、藤原先輩が心配そうに私を見ていた。
「はい…」
返事しながらも、見られていたなんて恥ずかしくて、目線を先輩から逸らす。



