13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


「明日、そこに戻してくれれば良いので」

言いながら先輩がちらっと見たのは、例の傘置き場。

「じゃあ」
「え、あっ!ちょっと…」

わたしの止める声も聞かず、先輩は呼ばれた方へと行ってしまった。

「今の…噂の岡田くんの彼女だよね?」
「…うん」

頷く心境は複雑だけど、友達は翔に対するわたしの気持ちを、知らないから仕方ない。

「初めて見たかも。本当にかわいい感じの人だね」

津田先輩が女友達と二人並んで、玄関を後にする姿がすぐに目に入った。
小さなピンク色の折りたたみ傘に、きちんと体が入っていて、わたしには絶対小さい傘が、先輩にはちょうど良い大きさ。

今日は翔と一緒じゃないんだ…と思いながら、小さな後ろ姿を見つめる。

「それに、優しい人だね」

友達の言った言葉にぴくりと反応して、わたしは手の中に残された傘に視線を変えた。

雨の日に傘を貸してくれるなんて、ベタすぎる優しさ。

だけど…実際、見知らぬ人に貸してくれる人なんて、どのくらい居るだろう。

「うん…」

わたしはただ、頷くだけだった。