13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


使っていないように見えても、使っていないという根拠は、どこにもない。
早く帰りたいけど、人の物を勝手に使ってまで、帰ろうとは思わない。

「佳奈ってば真面目ー。じゃあ、あたしも待とうかな」
「傘ある人は帰りなさい。遅くなるよ」
「えー」

ふざけるように友達の背中を押して、そんな他愛もない会話をしている途中、

「あのー…」

誰かに声を掛けられて、わたしはその声の方へと振り向いた。

「え…」

呼び掛けた人の顔が目に入ったその瞬間、わたしは思わず声に出すくらい、ひどく驚いた。

だって、目の前に居たのは…津田先輩。

何で…。

ドクン、ドクンと、大きく鳴る心臓が…痛い。

そんなわたしとは対照的に、こっちを見上げる先輩は、ふっと微笑んだ。

「良かったらこれ、使って下さい」

そう言って差し出されたのは、ピンクの水玉模様の傘。

「あたし、折りたたみも持ってるんで」
「や、でも…」

「苺ー、何やってんのー?」

下駄箱の裏から聞こえた呼ぶ声に、津田先輩は「今行く!」と答えると、断ろうとしていたわたしの手を取って、傘を持たせた。