壁掛け時計を見れば、まだ授業が終わってそれほど経ってなく、だからかなと思った。
だけど、体育館に居る人達は、一向に部活の準備をしようとはしない。
おかしいと思って、誰か知り合いは居ないかと、身を乗り出した時だった。
「誰に用?」
突然、背後から誰かに話し掛けられた。
それはあまりに落ち着いた低い声で、先生かと思って勢い良く振り向くと、
真っ先に視界に入って来たのは、「ポテトチップス」と書かれた段ボールの文字。
慌てて視線を上にずらすと、やっと顔が見えた。
大きな段ボールを抱えた背の高い男は、人の良さそうな優しい顔。
全く知らない人だけど、先生じゃないのは一目瞭然で、
2年生か3年生…とにかく“先輩”だと雰囲気から判断する。
「いえ、誰かに用事ってわけじゃなくて……すみませんっ」
俺が扉の前から避けると、「ごめん」と小さく謝って、体育館の中に段ボールをドスンと置いた。
その重そうな様子から、当たり前だけど、段ボールの中身は、「ポテトチップス」ではないだろう。
「じゃあ、部活の見学とか?」
「あ…はい!」
姿勢を起こした先輩に、俺は大きく頷く。



