「や…何でもない!」
やっぱり言うのを辞めた。
これからどうするかは、西藤先輩の…二人の問題で、これ以上お節介はしちゃいけない。
「えー、何?」
「秘密!」
「気になるよー」
逃げるように足を早めると、追い掛けるように苺先輩もついて来る。それを俺は笑って見ていた。
「…」
ふと前を向いた瞬間、一人の女の子が走りながら通り過ぎる。
憎らしいくらい高い位置で揺れるポニーテール。
俺は彼女の、肩に掛けた鞄に付いたキーホルダーに目を奪われる。
いかにも“手作り”の、白くて丸いフェルト地のマスコットは、バレーボール…。
「もう翔くん!何なの?…って、どうかした?」
一心に前方を見る俺に、追い付いた苺先輩も前を見る。
「…どうもしないよ」
ずっとこうやって、苺先輩とふざけながら一緒に登校したいと思う反面、
ここから離れる覚悟を、ほんの少しずつ始めていた…。



