13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


“最近仲が良い”

確かにあれから…あの夏の夜から、藤原先輩は私によく話し掛けてくるようになった。

だけど、それは友達の期待しているような甘い感情からではなく、心配する優しさから。

あの日、藤原先輩が戻って来た時には涙は止まっていたけど、私が泣いてしまった事、きっと気付いていた。

だって、先輩が“泣きなさい”と、遠回りに伝えてきたんだから。


「先輩さ…絶対佳奈のこと、好きだと思うんだけど」

声を潜めて、真面目な顔で言う友達に「それはないよ」と、私は笑った。

「だって先輩、彼女いるもん」
「えっ!そうなのっ!?」

知らなかったと目を丸くする友達。

「うん。はっきりそう言ってたよ。さ、練習戻ろ!」

タオルを自分の荷物に戻して、さっきの藤原先輩みたいに、私は友達の背中を押した。


私自身、藤原先輩の事を異性として意識はしていなかった。

ただ、優しい人だと思っていた。


あの後…先輩の買って来てくれたアイスを、二人で食べながら帰った。

私に気を使ってか、特に会話はなかったけど、

口にしたアイスと、手に持った溶けたアイス…

藤原先輩という人の優しさを、ただ感じただけ-…。