“最近仲が良い”
確かにあれから…あの夏の夜から、藤原先輩は私によく話し掛けてくるようになった。
だけど、それは友達の期待しているような甘い感情からではなく、心配する優しさから。
あの日、藤原先輩が戻って来た時には涙は止まっていたけど、私が泣いてしまった事、きっと気付いていた。
だって、先輩が“泣きなさい”と、遠回りに伝えてきたんだから。
「先輩さ…絶対佳奈のこと、好きだと思うんだけど」
声を潜めて、真面目な顔で言う友達に「それはないよ」と、私は笑った。
「だって先輩、彼女いるもん」
「えっ!そうなのっ!?」
知らなかったと目を丸くする友達。
「うん。はっきりそう言ってたよ。さ、練習戻ろ!」
タオルを自分の荷物に戻して、さっきの藤原先輩みたいに、私は友達の背中を押した。
私自身、藤原先輩の事を異性として意識はしていなかった。
ただ、優しい人だと思っていた。
あの後…先輩の買って来てくれたアイスを、二人で食べながら帰った。
私に気を使ってか、特に会話はなかったけど、
口にしたアイスと、手に持った溶けたアイス…
藤原先輩という人の優しさを、ただ感じただけ-…。



