13センチの片想い。私とアイツの恋の距離

♪佳奈side♪


真夏の暑さで蒸し返る体育館。

練習から外れた私は、タオルを口元にあてて立ったまま、一方向を見つめていた。

今さっきまで自分がやっていた競技を、男子が一生懸命やっているだけの、見慣れた光景。

別に技術や試合を見るわけでもなければ、誰か個人を目で追うわけでもない。

ただ“男子バレー部”を、見ているだけだった。


そんな中、ふとコートの外に居た一人と目が合う…藤原先輩。

軽く会釈して目を逸らそうとしたのだけど、先輩は手を振って、こっちに向かって歩いて来た。


「何見てんの?」
「…すみません」

練習の邪魔になるからやめて、という意味かと思って頭を下げると、「そうじゃないよ」と藤原先輩は笑った。

「何?檜山さんの好きな人が居るとか?」
「違います」
「じゃあ何?何かある?」

聞きながら男子バレー部のコートを見る先輩。

「みんな…背、高いなって思って」

言いながら私も、もう一度男子バレー部に視線をやる。

試合をしている人も、自主練している人も、ほとんどが背の高い人。

「まぁ、確かに高い人が集まってる感じだけど…」

それがどうかした?と、藤原先輩は不思議そうに私の顔を見る。