13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


「あっそ、お幸せに」

顔も見ずにそう言って、西藤先輩は玄関に向かって早足で進む。

ドアノブに手を掛ける先輩に、何か言わなくてはと、身を乗り出した。

「俺はっ!苺先輩の事好きですからっ!」
「……」

叫ぶように言った言葉。
西藤先輩は振り向きもせず、黙って家の中に入って行った。


「…はぁー……」

俺はその場に力無くしゃがみ込む。

緊張した…。
先輩すっげー怒ってた。俺、もう二度と話してもらえないだろうな…。

でも…良かった。

西藤先輩は、絶対に苺先輩の事が好きだ。

しかも、かなり強い気持ちで。


「は…ははっ…」

緊張が解けたからなのか、安心したからなのか、どちらか分からないけれど俺は笑っていた。


今どうして、藤堂先輩と付き合っているのかは分からない。

だけど大丈夫…大丈夫だよ。

きっと苺先輩の想いは届くから…。


脳裏に浮かぶ、愛しい人の泣き顔と笑顔。


本当に良かったと思うのに…


頬を伝う雫は、夜空の星しか知らない秘密-…。