「あっそ、お幸せに」
顔も見ずにそう言って、西藤先輩は玄関に向かって早足で進む。
ドアノブに手を掛ける先輩に、何か言わなくてはと、身を乗り出した。
「俺はっ!苺先輩の事好きですからっ!」
「……」
叫ぶように言った言葉。
西藤先輩は振り向きもせず、黙って家の中に入って行った。
「…はぁー……」
俺はその場に力無くしゃがみ込む。
緊張した…。
先輩すっげー怒ってた。俺、もう二度と話してもらえないだろうな…。
でも…良かった。
西藤先輩は、絶対に苺先輩の事が好きだ。
しかも、かなり強い気持ちで。
「は…ははっ…」
緊張が解けたからなのか、安心したからなのか、どちらか分からないけれど俺は笑っていた。
今どうして、藤堂先輩と付き合っているのかは分からない。
だけど大丈夫…大丈夫だよ。
きっと苺先輩の想いは届くから…。
脳裏に浮かぶ、愛しい人の泣き顔と笑顔。
本当に良かったと思うのに…
頬を伝う雫は、夜空の星しか知らない秘密-…。



