「おぉ、おやすみ」
「おやすみっ」
優しく夜の挨拶をする西藤先輩に、嬉しそうに応える藤堂先輩。
二人は付き合っているのだから当たり前な事だ。
だけど、無性にイライラした。
藤堂先輩を完全に見送って、今度こそこっちに歩いて来る。
「こんばんは」
顔がはっきりと確認出来る距離で、俺は挨拶をした。
西藤先輩は驚いたように目を見開いたが、すぐに冷めた表情になる。
「…こんばんは、何?」
「すみません、こんな時間に…。家、調べるような事してすみません」
謝りながら頭を下げる。
その人並み外れた整った容姿から、学年問わず人気の先輩。
こっそり付けて帰っちゃったと、騒いでる女子が居たのを覚えてて、調べるのは容易だった。
「別にいいけど…何?」
さっき藤堂先輩と話していた時とは、まるで違う冷ややかな視線と声。
それはきっと…“俺”だからだ。
「いきなり…こんな事言うの失礼ですが西藤先輩…」
覚悟するように、手に力を入れて握りこぶしを作る。
「苺先輩の事、好きですよね」
俺の言葉に、西藤先輩は何か詰まったように一瞬言葉を失った。



