「檜山さん!」
大きな声で名前を呼ばれて、私はやっと顔を上げる。
「やっぱり、すぐ帰って来ないから!」
公園を出る手前、藤原先輩は大きく手を1回振り、そう言うとそのまま出て行った。
変な事を言う人…。
ちょっとだけお節介だと思った。
でも…。
私はまた空を見上げる。
すると、さっきまでの騒がしい空ではなくて、静かな空へと戻っていた。いつの間にか花火は終わってしまったみたい。
少し寂しさを感じながらも、こっちの方が好きかもと思った。
小さな星がキラキラと瞬いて…まるで慰めてくれているように優しい。
頭の中には翔と津田先輩の姿。
消したいのに…消せない。
翔を想う気持ちも、
消したいのに…消せていない。
『自分の気持ち、押し殺しちゃダメだよ』
自分の気持ち…か。
「……いや…」
…嫌。
翔が他の女の子と抱き合うなんて、嫌。
恋をするなんて、嫌。
「…嫌よ…」
手に持っていたアイス。
私は空を見上げたまま目を閉じて、それを目の上に乗せるように当てた。
ひんやりと冷たいのに…
熱くてしょうがなかった。



