13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


「実はぶつかった時、中身見えたんだ。溶けるの知ってて引き止めた。ごめんね」
「…いえ」

藤原先輩に引き止められなくても、ぶつかる前にはアイスの事なんて綺麗さっぱり忘れていた。

だから、きっとどっちにしろ溶けていたし…。

「気にしな」
「買い直して来るね」
「えっ…」

私の言葉を遮って、藤原先輩はベンチから立ち上がった。

「そんな…いいですよ!自分で買いますから!」

慌てて私も立ち上がると、

「いーからいーから。すぐ買って来るから座って待ってて」

藤原先輩は私の両肩を押さえて、もう一度ベンチに座らせた。

「自分の気持ち、押し殺しちゃダメだよ」

肩を持たれたまま、小さな声で言われた言葉。意味が分からなくて問い掛けるように首を傾げる。

「赤くなっても、それで冷やせば大丈夫だから」

藤原先輩は私が手にしている溶けたアイスを一回見て、ニコッと笑うと、肩から手を離した。

「………」

呆然とアイスを見つめる。
耳には小さくジャリジャリと、土を踏む音。
買い直してもらうつもりなんてないのに、藤原先輩が離れて行くのを感じながらも、顔を上げられない。