「それで、逃げるみたいに走ってたんです」
夜空を見上げたまま、私は肩を落とした。
「だから泣きそうな顔してたんだ」
その言葉に、今度は私が藤原先輩の顔を見ると、
「でも…泣かないんだね」
私の目を見て、藤原先輩は静かに微笑んだ。
哀れむような笑顔に、胸が締め付けられる。
「泣いたって…何かが変わるわけじゃないじゃないですか」
「変わるよ」
即答した藤原先輩に、私はきょとんとする。
「そういえばそれ、大丈夫?」
いきなり話を変えて、私の手元を指差す藤原先輩。
「あっ!」
手に持っていたのはコンビニのレジ袋で、表明には水滴が沢山付いている。
忘れてたっ!!
「あー…溶けてる…」
言いながら取り出したのは、ソーダ味のアイスキャンディー。
冷たさはあるものの、袋はタプタプ言っていて、開けなくても溶けているのは一目で分かる。
レジ袋の中には同じ物がもう一袋。
あぁ…怒られる。
お母さんに頼まれて、コンビニに買いに来たのに、これじゃあ食べられない。
いや、もう一度凍らせれば食べれるかな…?
溶けたアイスを片手に、どうするか考えていると、
「ごめん」
何故か藤原先輩が謝った。



