「あー…」
だから名前を知っていたんだ、と私は簡単に納得した。
「思い出してくれた?」
「あ…いえ…」
男子バレー部の部長と聞いても、ピンとは来なかった。
ただ、どうりでどこかで見た事がある人だと…それだけ。
「まぁいいや」と藤原先輩は苦笑した。
「引き止めちゃってごめんね。大丈夫?」
「え…」
「どこかに急いでたんでしょ?」
「…」
藤原先輩に言われて、さっきまでの自分を思い出した。
翔と津田先輩の姿を見て、逃げるように走って来た自分…。
周りの景色を見れば、さっき通ったばかりの道を完全に引き返していた。
「…急いで…ないです」
急いでいるどころか、行くところもない。
家に帰りたいけど、翔と津田先輩に会いたくない。
抱き合う二人の姿を、脳がはっきりとフラッシュバックして…私は顔を伏せる。
「檜山さん?」
ヒュー………バンッ!!
藤原先輩が私の名前を読んだのと同じタイミングで、大きな音がした。
顔を伏せていても明るくなった視界。
その光に誘われるように顔を上げると、
空には花火が打ち上がっていた。



