13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


「あー…」

だから名前を知っていたんだ、と私は簡単に納得した。

「思い出してくれた?」
「あ…いえ…」

男子バレー部の部長と聞いても、ピンとは来なかった。
ただ、どうりでどこかで見た事がある人だと…それだけ。

「まぁいいや」と藤原先輩は苦笑した。

「引き止めちゃってごめんね。大丈夫?」
「え…」
「どこかに急いでたんでしょ?」
「…」

藤原先輩に言われて、さっきまでの自分を思い出した。

翔と津田先輩の姿を見て、逃げるように走って来た自分…。

周りの景色を見れば、さっき通ったばかりの道を完全に引き返していた。

「…急いで…ないです」

急いでいるどころか、行くところもない。
家に帰りたいけど、翔と津田先輩に会いたくない。

抱き合う二人の姿を、脳がはっきりとフラッシュバックして…私は顔を伏せる。

「檜山さん?」

ヒュー………バンッ!!

藤原先輩が私の名前を読んだのと同じタイミングで、大きな音がした。

顔を伏せていても明るくなった視界。


その光に誘われるように顔を上げると、

空には花火が打ち上がっていた。