13センチの片想い。私とアイツの恋の距離



「……」
「大丈夫ですか?」

視界には大きなスニーカーと、差し出された大きな手。

そして低い声から、顔を見なくてもぶつかった相手は、男の人だと分かった。

「…大丈夫です。ごめんなさい」

手を取らずに自力で立ち上り、小さく会釈して、さっさと去ってしまおうとした…けど、

「檜山さん?」

思いがけず呼ばれた自分の苗字。

……えっ?

私は反射的に振り返った。

「やっぱり檜山さんだ」

そう言って微笑んでいるのは、背の高い男の人。
歳は同じくらいか、少し上。短めに切られた髪が涼しげで…爽やかなイメージ。

どこかで見た事がある気がするけど…覚えていない。

「誰…ですか?」
「あれ?知らない?ちゃんと紹介しとけって山下に言ったのになぁー」

“山下”その名前には心当たりがあった。女子バレー部の部長。
だけど、目の前の男の人が誰なのかは一向に思い出せない。

「…山下先輩の彼氏、とかですか?」
「えっ?違う違う!」

男の人は笑って否定した。
笑い方は優しい感じがする。

「俺は藤原文也(ふじわら ふみや)。男子バレー部の部長やってるよ」