「……」
「大丈夫ですか?」
視界には大きなスニーカーと、差し出された大きな手。
そして低い声から、顔を見なくてもぶつかった相手は、男の人だと分かった。
「…大丈夫です。ごめんなさい」
手を取らずに自力で立ち上り、小さく会釈して、さっさと去ってしまおうとした…けど、
「檜山さん?」
思いがけず呼ばれた自分の苗字。
……えっ?
私は反射的に振り返った。
「やっぱり檜山さんだ」
そう言って微笑んでいるのは、背の高い男の人。
歳は同じくらいか、少し上。短めに切られた髪が涼しげで…爽やかなイメージ。
どこかで見た事がある気がするけど…覚えていない。
「誰…ですか?」
「あれ?知らない?ちゃんと紹介しとけって山下に言ったのになぁー」
“山下”その名前には心当たりがあった。女子バレー部の部長。
だけど、目の前の男の人が誰なのかは一向に思い出せない。
「…山下先輩の彼氏、とかですか?」
「えっ?違う違う!」
男の人は笑って否定した。
笑い方は優しい感じがする。
「俺は藤原文也(ふじわら ふみや)。男子バレー部の部長やってるよ」



