「はる。
俺、はるに嘘ついたことなんてあった?」

「ない…けど…。」

「衣里香の言葉と俺の言葉、どっちを信じるの?」

「それは…。」


ずるい質問だって分かってた。
だけど言わずにはいられなかった。



「でもっ…
あたしはいつも自分ばっかりで…
陽の役には立てなくて…
迷惑かけてばっかりで…
守られてばっかりで…
何も出来ない。」

「そんなことないよ。
っていうかはるはいつも自分ばっかりなんだ?」

「だってあたし…
陽の本当の気持ちにだって気付いてあげられない…。」

「本当の気持ち?」

「ホントは…応援に来てほしいって思ってるんだって…」

「ああ…そのことか。
そうだね…
本当のことを言えば、はるには俺の試合見てほしいし、応援してもらいたい。」

「その気持ちにも気付かないで…
あたしは自分の試合のことばっかり…。」

「でも、はるに自分の試合を放棄してまで俺の試合を見に来てもらおうなんて思わないんだよ。」

「え…?」

「はるが俺を一番応援してくれてるっていうのは知ってる。
それに、はるがこの試合のためにすごく練習したってことも知ってる。
だから…
俺は自分の試合を見に来てくれるより、はるが試合を頑張ってくれることのほうが嬉しいんだよ。
はるがはるらしくいてくれることのほうが…
俺はいい。」

「それはホントの気持ち…?」

「うん。本当の気持ちだよ。」


俺ははるを腕から解放して、真っすぐその目を見つめた。