「だめだって…言ったのに…。」


俺を見つめるはるは今にも泣きそうだった。


「はる…風邪の具合は?」

「陽、帰って。
お願い…今、あたし…。」


それ以降は言葉になってなかった。
俺を見るなり泣きだすはる。
そんなはるを目の前にして、俺は思わずベットに向かい、腰を下ろす。
そして、はるを抱きしめた。


「陽…っ…お願い…離してっ…
風邪うつっちゃ…。」

「俺は大丈夫だから。」

「もう、これ以上…
陽に迷惑かけるの…嫌…。」

「……そのことを言いに来たんだよ。」

「え…?」

「このままで聞いてくれる?」


はるは俺の腕の中でコクンと頷いた。



「はる、大体分かったよ。
衣里香にいろいろ…言われたんだね。」

「っ…。」

はるが一瞬だけびくっとした。
俺は腕の力を強めて、さっきよりもぐっと自分のほうに引き寄せた。


「あのね、はる。
俺は…はるのことを迷惑だなんて思ったこと、一度だってないよ。」

「…そんなの嘘でしょ…?」

「嘘じゃないよ。」

「陽は優しいから…
いつもそうやって…
あたしを傷つけないように嘘を言ってるんでしょ?
あたし、傷つかないから、ホントのこと言って…?」


俺を見ただけで泣いてしまうような子なのに、傷つかないだなんてそれこそ嘘なのにな…
なんて思ってしまう。