「衣里香…またお前か…。」

「何が?」

「またはるにいらないことでも言って…。」

「いらないことなんて言ってないわ。
あたしが言ったのは真実だけよ。」

「真実?」

「ええ。
あたしの言ったことが本当だったから、あの子は昨日何も言い返してこなかったわ。」

「何を言ったんだ?」


俺はなるべく落ち着いた声を出すように努めた。
でないと怒りが衣里香に伝わってしまうような気がしたから。


「だから言ってるじゃないの。本当のことよ。」

「その内容を聞いているんだ。」

「そんなの本人に聞けばいいじゃないの。
付き合ってるんでしょう?一応。」

「一応?」

「陽。
この際だからはっきり言うけど、あなたとあの子じゃつり合わないわ。
それは誰の目から見ても言えること。
あなたは容姿端麗で成績優秀だけどあの子ときたらただの運動バカ。
容姿も普通だし、あなたに迷惑をかけてばかりじゃない。」

「迷惑…?」

「ええ。
あなたにあの子が何の利益をもたらすって言うの?
あの子とあなたが一緒にいることで、あなたにプラスになることなんて何もないわ。
あの子はいつも自分ばっかりよ。
いつも自分のことしか考えていない。
そんな子に陽の彼女は務まらないわ。

でもあたしなら…。」

「いい加減にしてくれないか。」


我慢の限界だった。

俺は衣里香の言葉を遮った。