「今は…もう…抱きしめられない。
今はるを抱きしめたら…離せないから。
はる、顔を上げて?」

その声に導かれるように、あたしは顔を上げた。
涙を陽がそっとすくってくれる。


「俺はこれからしばらく…
いつもはるのそばにいてあげることができなくなる…けど…
それでも一番にはるを想ってるから。
その気持ちは一生、変わらない。それだけ、覚えておいて。
あ、それと…
2年後…また改めてプロポーズするし、その時本物を渡すけど…。」


そう言ってあたしの右手の薬指にはめてあった指輪をはずす陽。


「陽…?」

「今は婚約指輪ってことで。」


左手の薬指に収まった、大切な指輪。



「行ってくるね。」

「…うんっ…。」



あたしは大きく頷いた。

陽があたしに背中を向けて、改札へと歩み出す。




「陽っ!!」

「え?」