ムキになって話す私がおかしいのか、英部長はニンマリと口許を緩ませたまま私の頭をワシャワシャと撫でて来る。


「…こりゃ、アイツのツボに嵌まるかもな。」

「なんです?」

「いやいや、何でも。そんじゃ、お使い頑張れよー。ウサギちゃん!」


ニンマリとしたままヒラヒラと手を振る英部長に思わず眉を寄せてしまう。
あの人に捕まったせいで時間をだいぶロスしてしまった私は小さくため息を吐いて、歩きだせば腕にひんやりとした感触に目線を腕へとおとした。


「………あ、まただ…」


腕の中には書類。書類の上にはひんやりと冷たいストレートティー。
私をからかって去っていく英部長はいつもこうして気付かない内にストレートティーを残す。

紳士な英部長だけでいるなら良いのに、なんて考えながらも足をまた動かして総務課へと向かう。


やっぱりその最中で色んな人が私をウサギちゃん、と言う。最初は一々否定していても最近はだいぶ面倒で愛想笑いで上手く交わせるようにはなっていた。

ただ、ウサギちゃんと呼ばれるのは良いが、その中には好意的じゃないのが大半。
なぜか年上や先輩、上司に可愛がられる性質の私は味方よりも多分、敵が多いのは自覚している。