「カスミ」
娘が急にそう言った。
「カスミです。私の名前」
「あぁ」
ヒサヤは少し遅れて
「俺はヒサヤ」
そう名乗る。

「宜しくお願いします。ヒサヤさん」
カスミが少し震えながらも明るい声で言う。

暗く、足もとも悪い。そして揺れと小規模の崩落。
怖いだろう。
正直ヒサヤも怖かった。
「大丈夫。絶対助かる」
それは自分に言う言葉でもあった。
繋いだ手の温もりは希望の灯りのような気がした。




そんなカスミが、葉緑体を持つ貴族だった事に打ちのめされる。
ヒサヤは…革命を掲げるテロリスト…

―何故?
何故なんだ。

「月よ。ヒサヤさん」
振りむいたカスミの笑顔が曇る。

その表情を曇らせたのは自分の表情だと、ヒサヤは気付かない。
ヒサヤの心の中は疑問符の嵐だ。