目を凝らせば遠くに動く影がある。
声の感じは 女性。

馬鹿な。
こんな夜のメトロになんで人が?

急いで身の回りの捨てた物を瓦礫に埋め込む。
組織に通じるものは持っていないにしろ、用心に越したことはない。

「大丈夫か?」
影に向かって声をかける。

「あ、はい!」
女性は嬉しそうにそう答え、影が動く。

「きゃ」
転ぶ。

ヒサヤは慌てて、
「そっち行くから!動かないで!」

声の感じからすれば、一般のまだ年若い娘だろう。
それこそなんでここにいるのか分からない。


「大丈夫?」
近づいて声をかけると、娘はえへへと笑って、
「転んじゃいました」
答えになってない答えだが、声の調子では無事なようだ。