目の前のその光景を
  美しい
そう思ってしまった。


自分はどうかしてしまったのではないか。
彼女は、
彼女はこんなにも自分たちと違うのに。


透けそうな滑らかな緑色の肌。
柔らかく跳ねる短い髪。
腕や肩をむき出しにした丈の短いワンピースは薄く、
月の光を通して彼女の体のシルエットが影絵のように浮かび上がる。

その容姿は間違いなく、
憎むべき貴族たちのソレなのに。


彼女は、
貴族の娘の彼女は、

透き通った笑顔で月明かりの下で幻のように舞った。




ヒサヤが彼女、カスミと出会ったのは恐ろしいほどの偶然だった。