時折建物の崩落で地面が揺れる。

怖さのあまり掴む力が上がったのだろうか、
「ここは大丈夫。
はぐれないで」
ヒサヤが励ますように言った。


光に近付くにつれ足元に瓦礫が転がるようになり、
ヒサヤは天井ばかりを気にしている。

カスミはいてもたってもいられず、手をほどいて駆け出した。

「カスミさん!!」
ヒサヤが慌ててカスミを呼ぶが、
「大丈夫!」
カスミは瓦礫を踏みしめて、月の下へと躍り出た。

丸く抜け落ちた天井から差し込む光は、舞う粉塵で軌跡が浮かび上がり、まるで光の柱だ。

崩れ落ちた天井が積み重なった丘を登り、全身に月光を浴びる。

喜びに上気した顔で小さく一回転。

清冽な月明かりはカスミを祝福するように絶え間なく降り注ぐ。