カスミが泣きそうな顔で瓦礫から降りてくる。

「行きましょう。ヒサヤさん。
ここから出なくちゃ」
カスミはそう言うと一人で歩いていく。

細い肩で、細い脚で。

それを見た時、ヒサヤはぐちゃぐちゃとした感情の中から一つだけ何かを見つけた。
それは、小さく温かかった。


ヒサヤは追いつくとカスミの手を掴む。
「カスミさん」
カスミが足を止めて振り向く。

「ここから先はもう崩落はないから」
ヒサヤが前に出る。
「行こう」
2人はまた歩き出した。


ヒサヤの心の中は、相変わらずぐるぐると訳の分からないものが駆けまわっていたけれど、
繋いだ手の温かさは心のそれと同じだった。

希望という名ではないのなら、これは何なのだろうか。
この暖かさは…