何が起こったと言うのか。


 いきなり音の消えた世界に。

 驚き、慌てた弁慶が。

 ばんっ、と大きな音を立てて。

 蹴り破って出て来た戸の方を見ている者など、一人もいなかった。

 ここに集まった者どもは、皆。

 遮那王の首が目当てのはずだった。

 その、道に至る扉が。

 今、開かれたと言うのに。

 誰も関心を向けることがなく。

 まるで、目に見えぬ壁に阻まれたかのように。

 全員が、固まり、立ち尽くしていた。

 その、皆が見ている視線の先にあるものを見て。




 弁慶は、声の限りに叫んだ。



「弥太郎……!!」