○迷い家(マヨイガ)

これは柳田国男の遠野物語に書かれたことで有名になった、東北地方に伝わる山中の不思議な家の話です。

山奥に迷い込んだ者の前に現れる、人の気配はするのに誰もいない立派な屋敷の伝承で、その屋敷からお椀などを持ち帰った人がそれで穀物を計るといつまでたっても尽きず、その家は大層栄えたという話などがあり、富裕層起源説話と関係しているとも言われています。

人生で一度しか訪れられなかったり、その屋敷の人間の姿を見てしまうと帰ってこられず神隠しに遭う、などとも言われ、隠れ里の伝説などとの関係も窺えます。


○天狗(天狗さらい)

説明不要、誰でも知っている日本三大妖怪の一つ、天狗です♪

作中に登場させたように、階級があったり、また異なる名前で信仰の対象とされている大物には同一と解釈されるものもいたりと、なかなか奥の深い妖怪です。

天狗が起こす様々な怪奇現象の中には、「天狗さらい」といって、天狗に人間がさらわれて神隠しにあったという話も伝わっています。

平田銕胤(ひらたかねたね)によって書かれた「仙境異聞」は、江戸時代の頃に天狗さらいに遭い、数年後に戻ってきた少年のインタビューで、少年が垣間見た妖しい世界の様子が色々語られており、

この作品では特にこの「天狗さらい」の話をモチーフにしてみました。



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