何たる不覚……!


俺を庇って斬り裂かれ、崩れ落ちた鈴華の姿を認めて

俺は愕然たる思いで、この娘と出会った時に抱いたよりも遙かに大きく重くのしかかる後悔と自責の念に打ち震えながら、己の油断を呪った。


鈴華の帯から吊り下がった桜貝の根付。

俺にはそれに、確かな見覚えがあったのだ。


深く記憶の底に埋没し──

いや、そうではないのかもしれぬと思う。

これまでこの健気な乙女との会話の中で、おそらく無意識のうちに封印していたのであろう俺の記憶の気泡がにわかに浮かび上がり、

俺はその儚いうたかたの過去とともに懐にしまい込んで忘れていた袋の中身を取り出した。

鈴華が思い人と交わした約束の証だという、その桜貝の貝殻の一片は、彼女の帯の根付の貝と見事に合わさって一つになり、

「朔様がやはり、佐久太郎なのでしょう──!?」

再びその花弁の如き唇から解き放たれた問いに対して、


今や鮮やかに十年の昔の記憶を取り戻した俺は、


「違う……」


それでも否定しかできぬ己にぼう然となりながら、はらはらと鈴華の頬を伝っては落ちる雫を見つめていて──


反応が、できなかった。


背後から振り下ろされた夜小丸の刀に。