「逃がさん!」

打ちかかってきた別の侍の刀をも容易く受け流し、首筋に峰で鋭い一撃を食らわせながら、

朔太郎が口元に笑みを浮かべた。


ほんの刹那垣間見ただけではあったけれど、
それは私が思わず見とれるような、強気でどこか艶めいた笑いだった。


「天候を操り、山の自然を乱す場を作り──天狗の力を斯様な所業に用いた罪、赦すまじ!

魔王朔太郎の名において、本日ただ今をもって烏天狗夜小丸の神通力を剥奪致す!」


朔太郎がそのような口上を述べた途端──


空(くう)を稲妻が走り抜け、烏天狗の体を貫いた。


私はあっと声を上げる。


上空で、烏天狗の背に生えた翼が霧散する。

たちまちにその体はぐらりと傾き、烏天狗は真っ逆様に落下した。