触れたら、届く距離なのに、指先は彼には触れられない。 愁哉さんの呟きに胸が締め付けられて、痛い。 あの日、愁哉さんが私が泣き出すまで抱き締ていてくれた温もりを、あなたに返せたらいいのに。 傷つけたのが自分だと責める心は後悔で埋め尽くされて、泣かないあなたの代わりに涙を流したいだなんて、勝手過ぎるわね。 触れたい、だなんて勝手。 卑怯なのは私。 いつだって、形だけで縛り付けて、逃げ出せないようにしたのに。 愁哉さんが席を立つ。 触れない指先がジンジンと痛い。