パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~

「な…なんでそれを……?」


奈桜が数秒後、ようやく言葉を発した。
思考回路も、程よく疲れた体も、まだ固まっている。


「えっ?何?」


タオルで顔を拭きながら、奏は明らかに適当そうな返事をする。
奏がほのかなタオルの香りに、「これ、いい匂いするよ」と言って渡して来ても、今の奈桜には嗅覚を働かせる余裕がなかった。


「奏……、いつから?」


ガチガチに固まったままの表情。


「えっ?何の話?」


柔らかい白い布地は、奏の額の汗をすぅーっと吸い取って行く。


「何のって、今、言ったよね?」


『子持ち』というフレーズだけは出したくない。
何故なら、聞き間違いだと思いたいから。
そう信じたいから。


「柔軟剤?スタッフに聞かないと分からないなぁ」


こんなとこでボケるなよ…と奈桜は心の中で突っ込む。
と同時に、さっきのは冗談だと確信が持てた。