「ふぅ~。踊ったねぇ」


スポーツドリンクを一気に喉に流し込みながら、奏が稽古場の壁にもたれて座る。
疲労感も練習のひとつの成果だろう。


「フフフ。奏、さっき、ごまかしてただろ?」


スタッフにスポーツドリンクを渡され軽く頭を下げると、奈桜は奏の隣に腰を下ろした。


「えっ?バレてた?そっかぁ。上手くごまかしたつもりだったんだけどなぁ。…あそこさ、難しいんだよ。なんでサビに入る前にあんなにステップ踏まなきゃなんないの?」


「知らないよ」


クッと笑いながら奈桜はゴクッとドリンクを飲む。
確かに激しい振りが続く。が、奈桜は元々踊る事が好きなので全く苦にならない。
逆に踊れば踊るほど気持ちが良く、もっと激しい振り付けを期待してしまう。


「でも奈桜はさすがだよね。全然疲れてるように見えないもん。あれだけ踊ってるのにさぁ。…とても子持ちとは思えないよ」


無邪気に笑いながら言う奏に、奈桜の顔は凍り付く。