パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~

「なんでそんな事聞くの?」


普通、そんな聞き方をすれば『何かある』と気付かれてしまうだろう。
言った後で、優子は桜がまだ5歳である事にホッとした。


「美奈子ちゃんがね、好きなんだって。すごくカッコイイんだって」


桜のあどけない瞳に優子の胸が痛む。


「そうなの?…Z?知らないなぁ。女の子のグループかしら?」


白々しい事を口にしながら、頭の中で必死に上手い逃げ方を考えている。


「違う。男の人。5人だって。美奈子ちゃんは奈桜って人が1番好きなんだって。踊りがカッコイイんだって。今度、コンサートにも行くって言ってた。美奈子ちゃんのお母さんも好きなんだって」


優子は『奈桜』というフレーズを聞いた途端、思いっ切り咳き込んだ。


「パパと同じ名前だね」


ひと思いに倒れてしまいたいと優子は心から思った。